製缶品を鋳造化するメリット・デメリット
- hshirae
- 2024年12月18日
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更新日:2月4日
はじめに:製缶と鋳造の概要

ものづくりにおいて、金属加工は欠かせない要素であり、その中でも製缶と鋳造は、それぞれ異なる特徴を持つ代表的な加工方法です。
製缶とは、鋼板などの金属板を切断、曲げ、溶接などの加工を経て、箱型や円筒型などの様々な形状の製品を製作する方法です。比較的単純な形状の製品を、小ロットから製作することができ、設計変更にも柔軟に対応しやすいというメリットがあります。 一方で、溶接部が存在するため、強度的に劣る場合や、複雑な形状を製作することが難しいといったデメリットも挙げられます。
鋳造は、溶かした金属を鋳型に流し込み、冷却・凝固させることで目的の形状の製品を得る製造方法です。複雑な形状や中空形状なども一体成形できるため、設計の自由度が高い点が魅力です。また、大量生産に適しており、寸法精度も高い製品を製作することができます。 しかし、初期費用として鋳型製作費用が発生するため、小ロット生産の場合には割高になる可能性があります。
製缶と鋳造は、それぞれ異なる特徴を持つため、製造する製品の形状、サイズ、強度、コスト、用途などに応じて最適な方法を選択する必要があります。
製缶品を鋳造化するメリット

強度向上
鋳造品は一体成形であるため、製缶品のように溶接部が存在しません。そのため、強度的に優れた製品を作ることが可能です。 製缶品では、溶接部が強度的な弱点となり、応力集中が発生しやすいため、破損のリスクが高まります。一方、鋳造品は一体成形であるため、溶接部が存在せず、応力集中が発生しにくいため、より高い強度を実現できます。
コスト削減
大量生産の場合、金型鋳造を用いることで、1つの金型から多数の製品を製作できるため、1個あたりの製作コストを削減できます。 金型鋳造は、初期費用として金型製作費用が発生しますが、一度金型を製作してしまえば、大量の製品を安価に生産することができます。
軽量化
鋳造では、リブや肉抜きなどの形状を自由に設計できるため、製缶品よりも軽量な製品を作ることが可能です。 製缶品では、板材を曲げたり溶接したりするため、肉厚が均一になりがちですが、鋳造では、製品の形状に合わせて肉厚を変化させることができるため、軽量化を図ることが可能です。
設計自由度の向上
複雑な形状や中空形状なども一体成形できるため、設計の自由度が向上します。 製缶品では、板材を加工するため、複雑な形状を製作することが難しい場合がありますが、鋳造では、複雑な形状も一体成形できるため、設計の自由度が向上します。
表面性状の向上
鋳造では、鋳肌の美しい製品を製作することが可能です。製缶品では、溶接跡が残ったり、表面が粗くなる場合がありますが、鋳造では、滑らかな表面を持つ製品を製作することができます。
製缶品を鋳造化するデメリット

初期費用
鋳造には、鋳型製作費用などの初期費用が発生します。特に、金型鋳造では高価な金型が必要となるため、初期費用が高額になる傾向があります。
金型製作期間
金型製作には時間がかかるため、製品開発のリードタイムが長くなる可能性があります。
設計変更の難しさ
一度金型を製作してしまうと、設計変更には金型の改修が必要となり、コストと時間がかかります。 木型改造の必要性がある場合、「入子」による兼用化を検討することが有効です。入子とは、木型の一部を交換可能な構造にすることで、複数の図番に対応できる木型のことです。入子化により、設計変更時のコストと時間を削減することができます。
材料の制約
鋳造できる材料は、溶融・凝固が可能な金属材料に限られます。 製缶品では、様々な種類の金属板を使用することができますが、鋳造では、溶融・凝固が可能な金属材料しか使用することができません。
製缶品の鋳造化が適しているケース
製缶品の鋳造化は、以下のようなケースに適しています。
大量生産の場合 金型鋳造を用いることで、大量生産によるコストメリットを得ることができます。
複雑な形状の製品の場合 鋳造は、複雑な形状を一体成形できるため、製缶では製作が難しい形状の製品に適しています。
強度が求められる製品の場合 鋳造品は、製缶品よりも強度的に優れているため、強度が求められる製品に適しています。
軽量化が求められる製品の場合 鋳造では、リブや肉抜きなどの形状を自由に設計できるため、製缶品よりも軽量な製品を作ることができます。
高品質な表面性状が求められる製品の場合 鋳造では、滑らかで美しい鋳肌を持つ製品を製作することができます。
製缶品を鋳造化する際の注意点

製缶品を鋳造化する際には、以下の点に注意する必要があります。
鋳造性 溶融金属が鋳型に流れ込みやすいか、凝固時に欠陥が生じやすいかなどを考慮する必要があります。
強度 必要な強度を満たすことができる材料と鋳造方法を選択する必要があります。
コスト 金型製作費用や材料費などを考慮し、総合的なコストを算出する必要があります。
リードタイム 金型製作期間や鋳造期間などを考慮し、製品開発のスケジュールを立てる必要があります。
まとめ
製缶品の鋳造化は、製品の性能向上、コスト削減、設計自由度の向上など、多くのメリットをもたらします。 一方で、初期費用や設計変更の難しさといったデメリットも存在します。 製品の用途、生産量、コストなどを総合的に判断し、製缶と鋳造のどちらが適しているかを検討する必要があります。
製缶品の鋳造化を検討する際には、経験豊富な鋳造メーカーに相談することをお勧めします。
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